慶吟会 keiginkai
吟詠の世界(漢詩)への誘い
内山峡(一節) 渋沢青淵
新設:2022-01-01

  内山(うちやま)(きょう)(一節)   渋沢(しぶさわ)青淵(せいえん)

 (いきお)いは青天(せいてん)()いて(ひじ)(かかげ)(のぼ)

 ()白雲(はくうん)穿(うがつ)()(つば)して()

 ()未牌(みはい)(とど)まりて絶頂(ぜっちょう)(たっ)

 四望(しぼう)すれば(ふう)(しょく)十分(じゅうぶん)(はれ)


【通釈】
自分の意気は青天を衝き、腕を捲ってよじ登る。
精神は白雲を穿ち、手に唾して進んでゆく。
ひつじの刻限(午後二時)に山頂に達して、
四方を眺めると、十分に晴れ渡り美しい景色である。
[注]
第1句の「青天を衝き」を「青天を衝け」としたのが、NHK大河ドラマのタイトル

【出所】
内山峡詩碑(佐久市内山 国道254号線沿い)


青天と白雲(五竜岳を望む)
撮影:2019-09-15 小野貴広 於白馬村

【作者】
この漢詩の作者は、数多くの日本企業の創業に関わり、日本資本主義の父と称された渋沢栄一(渋沢青淵)です。
1858年(安政5年) 栄一19歳の歳に、従兄弟の尾高惇忠とともに信州へ仕事で旅に出た際に佐久の名勝内山峡で全36句の漢詩「内山峡」を詠みました。
その漢詩の一節(第13-16句)では、山頂に到達した時に感じた気力の充実と爽快さを見事に詠っています。

【吟詠】
2005年から詩吟を再開した小野正典君(1975年卒)が吟じる「内山峡(一節) 渋沢青淵」を お聴き下さい



小野正典君は、現在慶吟会OB会副会長をつとめ、(公社)日本詩吟学院準師範の資格を有しています。


渋沢栄一立像(東京 常盤橋公園内)
撮影:2021-12-24 小野正典
【内山峡詩碑より 全詩文】

 内山峡       渋沢青淵
襄山蜿?如波浪  西接信山相送迎
奇険就中内山峡  天然崔嵬如?成
刀陰耕夫青淵子  販鬻向信取路程
小春初八好風景  蒼松紅楓草鞋軽
三尺腰刀渉桟道  一巻肩書攀崢嶸
渉攀益深険弥酷  奇巌怪石磊磊横
勢衝青天攘臂躋  気穿白雲唾手征
日亭未牌達絶頂  四望風色十分晴
遠近細弁濃与淡  幾青幾紅更渺茫
始知壮観存奇険  探尽真趣游子行
恍惚此時覚有得  慨然拍掌歎一声
君不見遁世清心士 吐気呑露求蓬瀛
又不見汲汲名利客 朝奔暮走趁浮栄
不識中間存大道  徒将一隅誤終生
大道由来随処在  天下万事成於誠
父子惟親君臣義  友敬相待弟与兄
彼輩著眼不到此  可憐自甘払人情
篇成長吟澗谷応  風捲落葉満山鳴

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